短編ドラマその6「トムとジェームス」


日時:2011年5月30日21時30分
2011年5月30日21:00
本日のお客様:トム・ウェイツ(62歳)、ジェームス・テイラー(63歳)
場所:スローハンド
トム:「まったくもってこの店はヒマだなあ。まあマスターも時間が余ってしょうがないだろ?」
マスター:「はあ、ここ何年かはピアノの練習ばかりで上手くなって…。」
~~トムばりの自虐的ジョーク喜ばせようと必死なマスター。~~~
トム:「ピアノっていうのはな、ハートで弾くもんだ。ややこしいピアノは専門ヤツに任せとけばいい。」
~~マスター、まだ懲りずにトムの機嫌を取ろうとして。~~
マスター:「あっ、そうそう、今年ですね。ロックの殿堂入り、おめでとうございます。さすがトムさんだ~。」
トム:「何言ってやがる、今までロックなんかやってきた憶えなんかないぜ。あっちから勝手に言ってきやがっただけだ。」
~~静かにドアが開く音、そこに現れたのはあのジェームス・テイラー。~~
マスター:「あれっ?ジェームスさんが何でここに?」
ジェームス:「やあ、妻が日本びいきでプライベートで京都に来てるんだ。バーボンのロックを一つ。」
マスター:「かしこまりました。トムさんもロス時代のお知り合いですね?」
トム:「ああっ、少しばかりちゃらちゃらしてるところを見かけただけだけどな。相変わらずダサい服を着てるな。久しぶりだな?」
マスター:「そういえばジェームスさんもすでにロックの殿堂入りされてましたよね?」
ジェームス:「ああ、いつだったかな?そこに居るトムよりずっと前にね。」
~トムのムッとした表情。気を取り直して…。~~
トム:「なあマスター、気分転換に気の利いた曲をかけてくれ。」
マスター:「何がよろしいでしょうか?」
トム:「そうだな…。」
~~トム、おもむろに手元にあるタバコのエコーのパッケージに何か書いてマスターに見せる。~~
マスター:「かしこまりました。DVDでよろしいでしょうか?」
トム:「おう、そのほうがいいな。」
~マスターDVDを探し出し、プレイヤーに…。
ジェームス:「何だこりゃ。カーリーじゃないかっ。しかも俺との別れ間際の…。」
~テレビ画面に映るのは「うつろな愛」を熱唱する若きカーリー・サイモンの姿が…。
トム:「ジェームス、いい女と付き合えてよかったな…。」
マスター:「ジェームスさん、僕が知っててやったんじゃないですよっ!!」
おわり