短編ドラマ その5 「トムとシガレット」

短編ドラマ「トムとシガレット」
出演:トム ウェイツ 6X歳(201X年現在)
~~201X年1月、京都は烏丸丸太町東南角にて~~
トム:「久しぶりに京都に来たら店の名前、変わってるじゃねえかっ!『純子の小部屋』?愛想の悪いホステスじゃ俺のジョークも冴えないしなっ!昔俺が作った『WARM BEER AND COLD WOMEN』を地でいきやがって・・・。タバコでも買ってホテルに帰るか~。」
~~トム、横断歩道を渡り向かいのコンビニに入って行く。~~
店員(元マスター):「いらっしゃいませ。」
トム:「あっ、おまえはっ!こんなとこで何してんだっ?」
店員(元マスター):「トムさん、どうもご無沙汰してます。不景気なもんで店やめて今はフリーターしてるんですよ~。最近はこのコンビニで働いているんです。」
トム:「なんか大変そうだな。大丈夫か?それにしてもあの時は世話になったな。それはそうとラッキーストライクを1カートンよろしく頼むぜ。」
店員(元マスター):「すみません、タバコ免許証を拝借します。お持ちですか?」
トム:「ああ、入国の時、申請して手に入れたよ。どうなってるんだ?この国は?これがなきゃ買うのも吸うのも出来ないのかっ!?まったく馬鹿げてるぜっ!」
~~店員(元マスター)、おもむろに免許証を機械に通す。~~
店員(元マスター):「あっ、トムさん、残念ながらお売りすることは出来ません。この免許証、禁煙モードになってますよ。」
トム:「なんだっ?その禁煙モードっていうのは?」
店員(元マスター):「タバコ免許証の携帯サイトで何かボタン、クリックしませんでしたか?」
トム:「そういえばさっきのバー、あまりにも愛想悪かったんで、携帯ばかりいじってたからな。」
店員(元マスター):「禁煙モードっていうのは政府が禁煙を推奨してるので、申請したら即座に免許が停止するシステムなんですよ。しかもそのボタン、一度クリックしたら1ヶ月、どんなことがあっても買うことも吸うことも出来ないんです。もし見つかったら警察に摘発されますよ。」
トム:「なんだそりゃ。俺は構わんから売ってくれっ!」
店員(元マスター):「駄目ですよ~。売る方も罪になりますから。トムさんは今、タバコ免停状態です。自動車免停30日と一緒ですよ。」
トム:「いい加減にしろよ~。何とかならんのかっ!」
店員(元マスター):「ホント申し訳ありません・・・。あっ、これなんかどうですか?『こどもたばこ』・・・。煙は出るけどニコチン、タール0mgです。まあ『こどもびいる』と同じ発想ですね。いちご味、バナナ味、抹茶味がありますがいかがですか?」
トム:「う~ん・・・。いちご味かな?」
店員(元マスター):「ありがとうございますっ!一箱100円、1カートンで1000円いただきます!」
テーマ : ショート・ストーリー
ジャンル : 小説・文学