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短編ドラマ その2 「トムとビリー」

282.jpg短編ドラマ「トムとビリー」
日時:2006年12月13日夜10時すぎ
場所:京都スローハンド
本日のお客様:ビリー・ジョエル(57歳)、トム・ウェイツ(57歳)

~~扉の開く音、一人の紳士がお店に登場~~
マスター:「いらっしゃいませ。あれっ、ビリーさん、昨日でジャパンツアー終わりですよね。何でまた?」
ビリー:「いや、明日帰るんでちょっとね。名古屋と京都なんて近いもんだな。アメリカでの移動距離に比べれば庭みたいなもんだな。」
マスター:「そうですね。日本は狭いですからね~。それはそうとビリーさん、今回のツアーはいかがでしたか~?」
ビリー:「まあまあだね。でも何で日本に来ると『ストレンジャー』や『オネスティー』ばかりやらされるんだろ?もういい加減にあきあきなんだけど。」
マスター:「そりゃ~しかたないですよ。日本ではシングルカットになって売れちゃいましたから。特に『ストレンジャー』はバカ売れでしたね~。日本ではちょっと雰囲気をパクッた『ルビーの指輪』なんていう曲が売れちゃったし、ちょうど同じ頃はやっていたアースウィンド&ファイアーの曲を折衷したような曲を美樹克彦が唄ってましたよ。売れなかったけど。」
ビリー:「誰それ?ミキなんとかって?まあいいか。で最後はピアノマンだからな~。あれは僕のデビュー曲だぜ。」
~~カウンターの端に座っていたヨレヨレのコートを着たお客様が突然ビリーを振り向いて~~~
トム:「そりゃ~仕方ないさ。俺だって人気があるのはアサイラムの時のアルバムばかりだぜ。」
マスター:「あれっ?ト、トムさん、何でまた?」
トム:「たまたまLAでのライブのあと酔っぱらってフラついていたら空港について、日本行きの飛行機に乗っちまったんだ。」
ビリー:「何かこのストーリー、無理があるな。まあいいか。そう言えばトム、同い年だったよな~。デビューも同じ頃だったような・・・。」
トム:「そうかもしれないが、俺はアンタには興味ないからな・・。」
マスター:「まあトムさん、そう言わずに・・・。トムさんは日本ではライブやらないんですか~?」
トム:「フンッ!、どうせ昔の曲ばかりやらされるに決まってるからな。俺は日本でも有名だって聞いたから、5年ほど前にシャレで『Big In Japan』っていう曲作ったけどまったく売れてないじゃないかっ。それはそうと今かかってるイーグルスはやめてくれないか。」
マスター:「あっ、すいません。このアルバム、トムさんの曲、カヴァーしてたんですね。たしかそれについて『ターンテーブルの埃よけくらいにしかならない。』とかおっしゃっていたとか・・。」
トム:「まあジョークだけどな・・。」
~~~トム、カウンターに置いてある売り物のCDを見て~~
トム:「ん?なんだこりゃ?グレープフルーツムーンって俺の曲のタイトルじゃないかっ!」
マスター:「あっ、すみません、僕のバンドのCDです。バンド名にお借りしました。」
トム:「ん、じゃあ少し聴かせてくれ。」
~~マスター、CDをチェンジ~~
トム:「何だ、ポップスじゃないか。こんなCD、ベランダのカラスよけぐらいにしかならないな。まあ歌詞は後ろ向きだから許せるかな。次、何か気の利いたヤツ、聴かせてくれ。」
マスター:「かしこまりました。」
~~~マスター、おもむろにCDをチェンジ~~
トム:「何だこりゃ~。リッキーじゃね~か。いい加減にしろよ~。知ってんだろ~。でもアイツともン十年も会ってね~な。なつかしいぜ。キツイタバコが吸いたくなったな。灰皿は無用だ。俺のコートのポケットが灰皿がわりだ。そのかわりと言ってはなんだが、タバコを買って来てくれないか?安くてキツいヤツをな。」
マスター:「かしこまりました。『しんせい』か『エコー』、どちらがいいですか?」
トム:「『しんせい』・・・かな・・?。」
~~おわり~~

テーマ : ショート・ストーリー
ジャンル : 小説・文学

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プロフィール

kunisano

Author:kunisano
京都市在住。ポップロックバンド、
GRAPEFRUIT MOONのバンマス。
担当はVo&Pと作詩作曲。
元、京都スローハンドのマスター。

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